香港でのH7N9鳥インフルエンザ症例についての追記
11月21日に発症したインドネシア人の女性(36歳)の症例について確定診断までに3回、ウイルス検出のための試験を行っていたことが分かりました。
食物衛生局局長の高永文によれば、この患者に対して行った初回と2回目の測定ではA/H7N9ウイルスは検出されず検査結果は陰性であったと発表した。
3回目の試験で、やっと陽性となり確定診断されたということであった。
胸部X線で肺に陰影を認めているという。
10月に感染した広東省の男児は、付近に養鶏場があり、その養鶏場から香港へ鶏が出荷されているそうです。香港政府はこの養鶏場からの生きた家禽が流入することに対して停止処分などをしておりません。香港大学の生物学系講座教授の袁国勇は「早急に鶏の流入を禁止しなければならない」と注意を促しています。
香港で初のH7N9鳥インフルエンザ症例が報告される
12月2日、香港で初めてのヒト感染性A(H7N9)鳥インフルエンザの確定診断がでました。
患者:36歳 インドネシア国籍
場所:香港 (感染は広東省深圳市か?)
職業:家政婦
来歴:11月17日に広東省深圳市へ行き、鶏を絞めてから煮て食べた。
11月21日に発熱、咳嗽があり、25日、26日と個人診療所へ診察に行く。
27日から息切れが始まり、香港の病院へ入院。
29日にICUへ。30日に別の病院へ回され治療を継続中。重症。
接触した家族:4人いるが、いずれも症状は軽い。
接触した家族も症状が出ているそうですが、感染しているのかどうかはまだ分かっていません。また、この症例の報告を受けて、深圳市は3つの大きな家禽市場に対し交易を一時的に止め、閉鎖するなどの緊急措置をとっています。
11月に発症した人数はこれで5人となりました。
12月に入ってからの発症例はまだありません。
1月末から2月にかけては中国は春節に入りますので、自動的に市場も閉鎖します。
12月にいかに感染者を出さないかが中国の課題になるでしょう。
広東省ではA/H7N9鳥インフルエンザ感染のリスクが増加するだろうと専門家が予測
10月に4名の感染者報告があったA/H7N9鳥インフルエンザですが、広東省ではインフルエンザの専門家が毎月A/H7N9鳥インエンザ感染のリスクが高くなっていくだろうと予測した記事がありました。
以下その内容です。
・H7N9鳥インフルエンザウイルス伝播経路:家禽批評市場 → 生鳥市場 → 人
・H7N9鳥インフルエンザウイルスの由来:家禽類(鶏、鴨、鳩)
・予防措置;①生鳥市場の閉鎖,②インフルエンザワクチンの接種
広東省CDCの所長である何剣锋は、毎月A/H7N9鳥インフルエンザのヒト感染へのリスクが増加していくということを示唆し、今年の冬と来年の春は家禽を取り扱う市場の管理を行うことが予防対策につながると表明した。これまで全省の毎年のインフルエンザサーベイランスの結果では、広東省のインフルエンザの流行は冬に比較的低水準となるが、翌年の2~3月頃には季節性インフルエンザが入ってくることがわかっている。
≪7割の患者に家禽との接触史あり≫
A/H7N9鳥インフルエンザでは家禽との密接な関係が一連の研究で証明されている。
12省市で発見された138例の患者に対し、調査を行った結果、70%の人に発病前に家禽と接触したか、家禽との距離が非常に近い環境にあったということがわかった。
何剣锋は、中国の禽類の間でA/H7N9ウイルスが循環しているが、禽類の養殖、流通・交易方式と人の生活との関係は根本的には解決されないため、生鳥市場の管理をルールにのっとって確実に行うことがA/H7N9鳥インフルエンザの予防に有効であると言っており、毎日の洗浄、1週間毎の消毒、月に1回の閉鎖などの対策をとる必要があるとしている。
≪妊娠前は予防接種を!≫
毎年春節前は季節性インフルエンザの流行の時期である。市民は予防の意味も込めてワクチンを接種することが大切で、決してワクチンをあなどってはならない。季節性インフルエンザには3種類あり、パンデミック、H3N2、Bと分類できる。
インフルエンザは変異するため、毎年インフルエンザワクチンをサーベーランスすることで株を選定している。ワクチンには先にあげた3種類のウイルス株が入っているため1度接種するだけで、3種類のインフルエンザが予防できる。
(以下省略)
これから冬になり寒くなってきます。インフルエンザの流行の季節、A/H7N9鳥インフルエンザの発生状況がどうなるのか、引き続き情報を追っていきたいと思います。
A/H7N9鳥インフルエンザ 新たな感染例
ヒト感染性H7N9鳥インフルエンザ 広東省にて新たな1症例が報告される
10月に入って浙江省で2例の報告があったヒト感染性H7N9鳥インフルエンザですが、新たに1例が広東省から報告がありました。
ここまでで報告されているH7N9患者は138例(45例死亡)となりました。無症候性で実験室検査で発見された北京の4歳男児を入れると139例となります。
以下今回の感染者についての情報です。
患者:3歳5か月 男 四川省遂寧出身
家族:4人家族 (父・母;電機工場の日雇い 兄1人)
工場の宿舎に居住。
来歴:
10月30日発症し、すぐに地域診療所へ外来へ行ったが治療効果が得られず東莞市常平医院へ治療を受けるため転院。このときインフルエンザ様症状と発熱があった。主治医が10月30日当日の臨床検体を疾病センターに送る。
11月5日早朝に広東省疾病コントロールセンターから新型鳥インフルエンザA(H7N9)核酸を検出したと報告があり、臨床症状と総合的に判断してヒト感染性H7N9鳥インフルエンザと確定診断された。
現在、東莞市人民病院感染科で隔離治療を受けている。患児には発熱もなく、臨床症状は軽度のもので、病状は安定している。家族を含めた7人の接触者には医学観察措置が取られていて、11月5日の午後5時に2名の地域診療所の医師もこの患児を診察・治療を行ったため同様の措置をとられることとなった。9人の鼻咽頭スワブにより採取された検体を実験室で検査している。
9人のうち3人にインフルエンザ様症状が出ており、実験室検査を急いでいる。そのうち2人が医療補助員で、もう一人は父親である。しかし、ヒト感染性H7N9鳥インフルエンザとは直接的な関係性がなさそうだと広東省疾病コントロールセンター所長の何剣峰は判断している。
家禽との接触史:
家族は毎週、近所の農業市場に行っていた。ここには4件の家禽販売店があった。
10月26日にこの患児も一緒について行き、そこで家禽との接触があった。
10月だけで3名の感染者が出ています。
wet-marketの閉鎖が有効であるという論文がLancetからも出ていましたが、今回のケースも家禽市場での感染が疑われるため、再び家禽の交易が厳しく取り締まわれる可能性があります。
ヒト感染性H7N9鳥インフルエンザワクチンの開発に中国が成功
10月26日、杭州の中国の科学者がヒト感染性H7N9鳥インフルエンザのワクチンを開発したと発表した。中国が自主的に作成した初めてのインフルエンザワクチンであり、今後中国のインフルエンザワクチンを国外から提供してもらってきていた歴史を塗り替えるかもしれない成果となった。
国家重大伝染病予防治療科学技術部門はワクチン生産を重要な案件の1つとし、浙江大学医学院付属第一医院と香港大学、中国疾病予防コントロールセンター、中国食品薬品検定研究院と中国医学科学院などの多くのユニットと協力し成功させた。今の所、関連する技術に対する検査は全てクリアし、ヒト感染性H7N9鳥インフルエンザワクチンを大量生産する段階にまで来ている。
(省略)
ワクチンウイルス株は中国医学科学院医学実験動物研究所新薬安全評価研究センターにてフェレットにより安全性が証明されている。『中国薬典』に制定されているインフルエンザウイルスワクチンに必要な技術水準を参考にし、検定は行われたとセンターは発表している。
検査の結果は、ワクチン株は野生型H7N9よりも病原性が著しく低下しており、高水準に弱毒化された標準型インフルエンザワクチン(PR8)と近似しており、インフルエンザワクチン株の基準と適合していた。これは、このウイルス株がヒト感染性H7N9鳥インフルエンザウイルスのワクチン生産条件と一致したことを意味している。
中国工程院院士の李兰娟は4月3日に採取された咽頭スワブ検体からH7N9ウイルスを分離することができたと報告している。後に、国際的に通用するインフルエンザワクチンの生成方法であるリバーストランスクリプション法により、PR8プラスミドをウイルス骨格とし、分離されたウイルス株をシークエンスしワクチン株の開発に成功した。
▲4月19日 浙江大学付属第一医院にて、患者の退院を見送る院士李兰娟女士
ワクチンの安全性を保つために、研究員たちは特殊な病原体を持たない鶏の胚中で15代継代し安定性と変異が起こらないことを証明している。
(以下略)
ヒト感染性H7N9鳥インフルエンザが中国で法定伝染病に登録される
以前のブログでもご紹介したと思いますが、中国では法定感染症を甲・乙・丙の3種に分類しています。
ヒト感染性H7N9鳥インフルエンザが乙類感染症に分類されました。乙類には他に、エイズやSARS、肺結核などが含まれています。
国家衛生計画生育委員会は中国における法定伝染病の種類を見直した。
これにより、ヒト感染性H7N9トリインフルエンザが乙類感染症に分類された。またA/H1N109パンデミックインフルエンザが乙類から丙類へ再編成され、高病原性鳥インフルエンザ(H5N1、H7亜型)は甲類から解除されることとなり、インフルエンザ感染症が改めて管理し直されることとなった。
この調整によりA/H1N109パンデミックインフルエンザは季節性インフルエンザと同じ扱いになりサーベイランスのポイントとして、流行株の状況とウイルスゲノム変化があるかどうかに焦点が当てられることとなる。高病原性鳥インフルエンザに対しては医療機関で感染した患者が発見された場合2時間以内に報告するとなっていた部分が24時間以内での報告に変更された。今現在では、ヒト感染性H7N9鳥インフルエンザは散発状態で報告されており、ヒト-ヒト感染が証明されていない。冬春季は呼吸器感染症ウイルスが多くなり、中国では生鳥市場での交易をすぐに停止させることが非常に難しいことを考慮するに、再びヒト感染性H7N9鳥インフルエンザ患者の報告があることが予測されると専門家は指摘している。
中国では39種類の法定感染症があり、甲類2種、乙類26種、丙種11種と分類されている。レベルごとでの法定伝染病によって、管理と予防コントロールの仕方が異なる。主に違いが出るのは以下の2つの面である。
①報告義務の時間:甲類であれば患者が発見され次第2時間以内に、乙類であれば24時間以内に報告する義務が生じる。
②予防措置:甲類の場合は早急に病人、キャリアーに対して隔離措置をとり、隔離機関は医学検査結果を根拠にする。疑わしい症例の場合は指定された場所での隔離治療を行う。医療機関内の病人、キャリアー、疑わしい症例と密接に接触した者に対しては指定された場所での医学的観察措置とその他の予防措置を取ること。隔離治療を拒否する或いは隔離必要期間中に隔離治療から離れる場合は、公安の協力を仰ぎ強制的に隔離治療措置を行うことができる。
医療機関は乙類或いは丙類感染症の患者を発見した場合は、病状に合わせて適切な治療措置と対応を取るよう判断すること。
とされている。
生鳥市場の閉鎖がヒト感染性H7N9鳥インフルエンザの感染リスクを低下させる。
10月に入り2名の感染者が出たヒト感染性H7N9鳥インフルエンザは、これまでに137例(北京での無症状であった症例を入れると138例)報告されています。
外気の気温が下がってくる冬季になると、感染者の報告がますます増えてくると考えられています。公衆衛生的な対策として生鳥市場(家禽市場)の閉鎖がこれまで取られていましたが、その対策がどれだけ有効であったのかを研究した論文がランセットで10月31日に発表されました。
この研究は生鳥市場の閉鎖がヒト感染性H7N9鳥インフルエンザのコントロールに対してどのような効果があったのか疫学的に解析たものでした。
『Effect of closure of live poultry markets on poultry-to-person transmission of avian influenza A H7N9 virus : an ecological study』
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(13)61904-2/fulltext
研究結果は、以下の通りでした。
①ウイルスの潜伏期間は約3.3日。また95%以上が8日以内に発症していた。
②生鳥市場の閉鎖2~3日以内ではヒト感染性H7N9鳥インフルエンザの発病率は迅速に低下し、生鳥市場の閉鎖は市民の感染リスクを97~99%低下させた。
③②の感染リスクは上海と杭州では99%、温州と南京では97%にまで低下した。
④季節性の要因としては絶対湿度が関係している。
これらの研究結果からは、今後冬から春にかけて生鳥市場を閉鎖することがヒト感染性H7N9鳥インフルエンザの波及を防ぐのに最も効果と効率のよい方法だということが分かった。
生鳥市場の閉鎖が、ヒト感染性H7N9鳥インフルエンザの最もよい公衆衛生学的な予防方法だということが発表されたわけですが、家禽の交易に携わっている人も多いので再び閉鎖可能なのかどうかが議論になりそうだと思います。
完全にH7N9ウイルス自体を駆逐しないといけないので、ウイルス自体への対処も同時に行っていく必要があるでしょう。
ヒト感染性H7N9鳥インフルエンザ感染者最新情報
中国浙江省で10月15日でヒト感染性H7N9鳥インフルエンザの発症者が再び出現したという報道がありましたが、23日にも新たな感染者が同じく浙江省で報告されました。
10月以来2人目の感染者となります。
患者:陳さん (男) 67歳 農家 嘉興市秀洲区
来歴:10月16日発病し、嘉興の病院で治療中。
浙江省疾病コントロールセンターにて再検査を行ったところ、この患者からヒト
感染性H7N9鳥インフルエンザウイルス核酸が陽性となった。
臨床症状と実験室結果、疫学的見地から確定診断され、23日に浙江省衛生庁へ報
告された。
現在のところ、病状は重くICUにて治療を受けている。
【中央テレビ新聞ネット 2013.10.23 18:20】
しばらく感染者報告が無かったヒト感染性H7N9鳥インフルエンザですが、10月に入って2名の報告がありました。
気温が下がってきており、またwet-marketの封鎖が解かれ、生きた家禽の流通が回復したためだと考えられます。
中国での生活スタイルと違って、日本では生きた家禽と直接触れ合うような場面が無いので日本での感染報告はまずないと思われますが、手洗い・うがいなどの予防策はこれからの季節、大切になってきます。
ヒト感染性H7N9鳥インフルエンザ 10月の感染者報告
しばらくA/H7N9の感染者の報告がありませんでしたが、本日15日に新たな感染者についての報道がありました。
以下記事内容です。
患者:劉 (男性) 35歳 会社員
場所:浙江省浙江市紹興県
来歴:10月8日に紹興県の診療所で診察。現在は紹興県のとある病院で入院中。
患者の病状は重く、今の所治療中である。
4月末から感染者の報告が途絶えていた浙江省では、実に半年ぶりの感染者報告となる。
8月では広東省で1例の報告があったが、9月には中国国内での報告は無かった。