H7N9 report 3.中国における家禽類との接触機会
中国では家禽市場のみでなく大衆市場でも生きた家禽を販売している場合が多い。そのため、家禽類との接触は日常茶飯事である。
つまり、家禽を扱う仕事をしている人たちは当然感染リスクが高くなるが、一般の人でも素手で家禽類と接触する機会が多くなるためヒト感染性鳥インフルエンザとの感染リスクが高くなるということになる。
購入した家禽は家庭内で絞めるため、もしその家禽がウィルス感染を起こしていた場合、感染機会が家庭内でもあることになる。
2013年3月31日に報道された安徽省の女性(35歳)のケースでも発症日までに2羽の鶏を家庭で屠殺し調理していることが知られている。今の所、それらの家禽と患者との間に感染経路が成立していたかどうかは証明されていないが、やはり感染リスクを考えると家庭レベルでの公衆衛生の知識と予防策を周知させていかなくてはならないのではないだろう。
新型H7N9インフルエンザウィルスの出現は、中国の家禽市場に与える衝撃が大きい。ウイルスが検出された養鶏所では7000羽も殺処分となるなど、その経済的損害はかなりのものになるだろうとされている。
加えて、中国ではB型肝炎の問題もある。以前に比べて予防接種の接種率が上がり、全体としては減少傾向にあるとはいえ、垂直感染の例も多く、無視できないものである。昨日台湾で発見された感染例ではB型肝炎ウィルスのキャリアーであるということであったが、肝炎を起こす可能性がある人群が多くなると薬物治療の効果が低下するおそれがある。
中国で使用されている抗インフルエンザ薬のNA阻害薬は、オセルタミビル、ペラミビル、ザナミビルである。ペラミビルは2013年4月5日に、今回のH7N9の出現が後押しなったのか認可されたばかりである。
オセルタミビルはプロドラッグとして生体への吸収効率を良くした状態で経口投与されるため、肝臓で初回通過効果を受けて初めて薬効が発揮できる。しかし、肝機能が低下していれば当然期待通りの効果を得られない可能性も出てくる。
最初に報告があった感染症例の内、上海の27歳の男性、安徽省の35歳の女性ともにB型肝炎を患っていたということであったが、今後B型肝炎でもプロドラック化されているオセルタミビルが有効であるかどうかのレポートも出てくると考えられる。