H7N9鳥インフルエンザ  information
新潟大学国際保健学教室では、H7N9の様々な情報のrumor surveillanceを行っております。
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report.5 山東省の親子での発症例 小児と成人の臨床表現の違いは?

山東省棗荘の父子の2人がH7N9鳥インフルエンザウィルス感染が確定診断されたが、臨床症状は二人の間で明らかな差異があると中新社済南支部で報じられている。

 

現地の取材班が収集した情報によると、患児は小児感染救急診断室で治療を受けているが、病状は比較的安定しており、飲食や排泄、睡眠は比較的正常の状態である。

また、局部肺炎症状が出ているが、重症でも危篤状態でもない。臨床診断によると、この患児はウィルスと細菌の複合感染を起こしており、同時に白血球の数量もやや高い。

この患児の病状が比較的穏やかなのは、発病の初めと6時間後の対比診断から判断しており、この患児童の病状発展は急速に悪化する様子は今の所無い。

 

 

一方、父親の方は病状の発展の仕方が安定せず、入院したばかりの時は明らかな病理症状が無かったが、入院4時間後には病状が急速に発展し、悪化する速度が速かった。

父親は7日たってから緊急治療を施したが、未だ生命の危機から脱出できていない。

ただバイタルは相対的に安定しているため、ECMO(人工心肺装置)による支持的治療をする必要が無い。

 

この二人の間に密接な接触史が存在しているため、直接的に2人の接触による感染を排除するべきではないが、臨床症状の違いが明らかであることは注目するべきことであろう。

同時に時間から計算して、父子の2人の症状の出方がヒト-ヒト感染を証明するための根拠を有していない。

H7N9鳥インフルエンザの最長潜伏期間が7日であり、この患児は父親が入院して8日後に発熱などの症状が出た。確定診断が下りるまでには、父親の入院から10日もの時間を有している。

この一例が家庭集合性病例の出現であっても、H7N9ウィルスが変異を起こし、ヒトの間で持続的に伝播を起こすウィルスになったということを表しているわけではない。

 

中国の国家衛生部門は全ての病例の疫学的調査と実験室の追跡研究により、H7N9の主な伝播方式が、『家禽類-ヒト』であると明言している。

 

                      中国新聞ネット 2013-4-29  20:20】

 

 

小児と成人では感染後に出る臨床表現が異なってくるようだ。

今の所、公式に発表があったH7N9鳥インフルエンザの確定診断が下りた小児は4人である。以下、その一覧である。

【患者】

1.李(男) 4歳 上海

 ≪来歴≫ 

 3月31日発病。4月4日確定診断。4月7日にリハビリを開始し、10日午後2時に退院。

 

2.女 7歳 北京

 ≪来歴≫

 4月11日に発病。すでに回復し退院している。

 

3.猛/孟 (男) 2歳 上海

 ≪来歴≫

 3月16日に両親と共に上海から湖南省長沙市へ列車に乗って移動。3月17日に発病。

 18日には体温が40.2℃まで上昇し、19日に上海へ戻る。治療を続け、22日に完全に

 回復している。

 

4.張 (男) 4歳 山東省棗荘市

 ≪来歴≫

 4月27日に発病。父親は36歳で建材販売をしており、14日発病。4月21日に来院し、

 22日午後に確定診断している。

 

 

小児と成人で臨床表現が異なってくるのには、免疫応答の違いが考えられるだろうが、それならば成人よりも小児で重症例が出てもおかしくは無い。しかし、今の所小児での死亡例や重症例が全く出てきていない。

これには生活習慣などのファクターも考慮する必要もあるかもしれない。

例えば『喫煙』というファクターはどうだろうか。

 

中国の衛生部が2012年に発表したデータでは、中国では成人の喫煙者数が3億人を超え、男性では52.9%に達するという世界でもトップクラスに喫煙率が高い。

青少年の喫煙に関しても楽観視できず、13~18歳の青少年者の喫煙者は1500万人、たまに喫煙をするものが4000万を超え、青少年の喫煙率が11.5%を超える。

 

これまでのH7N9鳥インフルエンザ発症者の中には少なからず喫煙者が含まれているはずである。上記の中国衛生部の発表したデータを参考にするならば、中国には実に日本の人口の3倍以上の人間が喫煙をしているのだから、当然、呼吸器感染症へのリスクも高くなる。

また、男性人口の約半分以上が喫煙をしているということを考えると、今回の死亡ケースで、男性が約65%となっていることもうなずけるだろう。

 

あくまで憶測の域を出ないのが現状であるが、小児と成人で治療方針に大差がないのにも関わらず、小児が重症化へ至らないのはこういった生活習慣の側面も手伝っているのではないだろうか。

 

いずれにせよ、今後H7N9鳥インフルエンザンについてもっといろいろなことが分かってこれば、重症化を抑えたり死亡率を減少させることが可能になってくるはずだ。