江蘇省の親子感染症例でヒト-ヒト感染の根拠となる可能性あり
7日、イギリス医学会雑誌(BMJ)が江蘇省疾病コントロールセンターの研究員から、ヒト感染性H7N9鳥インフルエンザのヒト-ヒト感染を証明することになるかもしれない最新の研究報告を受け発表した。しかし、今の所ウイルスのヒトへの感染力は強くなく、パンデミックを引き起こす可能性は低いとされている。江蘇省疾病コントロールセンターからも、同様の内容が発表されているが、今回の報告がヒト-ヒト感染の有力な根拠となる可能性があることに注目が集まっている。
【患者】
場所:江蘇省無錫市
A:60歳 男性 (父親) 4月26日に報道された症例
発病したのが、家禽類と最後の接触から5~6日後。
3月11日に入院。
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3月15日に容体が悪化したためICUへ。
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5月4日、多臓器不全のため死亡。
B:32歳 女性 (娘) 4月2日に報道された症例
父親がICUに入るまで*看病のために病院に泊まり込んでいた。父親と最後に接触し
て6日後に症状が出現。(3月21日に発病)
看病中は特に防御策を取っていなかった。
3月24日に入院。
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4月24日に多臓器不全で死亡。
この2症例のヒト感染性H7N9鳥インフルエンザのゲノム解析をしたところ、完全に一致した。また、32歳女性張さんの夫に軽い臨床症状が出ていたが、ウイルスについての検査を行ったところ陰性であった。同様に接触があった43名についても調査を行ったが、特に感染報告は無かった。
娘には家禽類との接触史は無かった。
江蘇省疾病コントロールセンターは、娘の張さんが防御策をしないまま父親の呼吸道分泌物に触れた(口腔内の痰の除去などを手伝っていた)ため感染した可能性があるとしている。
父親と同室にいた他の人に感染していなかったことから、ヒト感染性H7N9鳥インフルエンザウイルスは呼吸道分泌に直接接触すると感染する可能性があるが、飛沫或いはエアロゾルや空気感染の可能性は低いということを示唆しているとも考えられる。
そのため、感染者と接触するときには、マスクや手袋などの感染防御策を行い、分泌物に触れた時には手洗いと消毒を必ず行い感染を防ぐこと重要であるとしている。
今回のゲノム解析では、ウイルス作用のカギとなるアミノ酸部分の変異は見つかっていない。
中国では3月に最初のヒト感染性H7N9鳥インフルエンザの確定診断報道があってから7月21日までに133例の確定診断報道があり、そのうち43人が死亡している。
大部分は家禽類との接触史があってから発症していることが分かっている。
【2013.8.8 7:30 現代快速新聞】
【2013.8.8 観察者】
*中国では一般病棟の場合、基本的に病人の家族が看病を行い、日本の様に看護師が毎日のケアをするところは稀です。
ヒト-ヒト感染するヒト感染性H7N9鳥インフルエンザは流行がしやすい可能性が非常に高く、今回の致死率も考慮しますと非常に不安が生じるところではあります。
今回は飛沫感染の可能性が低いとされていましたが、7月18日の『Science』のネット版では、ヒト感染性H7N9鳥インフルエンザの飛沫による感染能力は非常に高いというレポートが中国の研究者からあったと発表がありました。
「H7N9 Influenza Viruses Are Transmissible in Ferrets by Respiratory Droplet」の著者らは、H7N9ウイルスは家禽類にはもともと病原性が無いが、人体に侵入してから突然変異を起こした後に、哺乳類に対して病原性と水平伝播能力を得るだけでなく増強することが分かったため、パンデミックを引き起こす可能性が高いことを示唆している。
研究者たちは人類の伝播状況に近いフェレットを利用して実験をしており、家禽類から分離されたH7N9ウイルス2株と人体から分離されたH7N9ウイルスの3株の感染力価を調べた。5株のH7N9分離ウイルスを呼吸道飛沫伝播させたところ、家禽類からの分離ウイルス1株と人体から分離された全てのウイルス株がフェレットに感染し、さらに人から分離されたウイルスのうち1株は感染力価が非常に高かったという結果を得た。
【2013.7.20 5:31 人民日報ー人民ネット】
また、人から分離されたH7N9ウイルスをフェレットとブタを使って感染力価と病原性を調べた論文もありました。(Infectivity, Transmission,and Pathology of Human-Isolated H7N9 Influenza Virus in Ferrets and Pigs)
H7N9以外にも、台湾ではH6N1の感染症例が報告されたり中東での新型コロナウイルスの出現と、ウイルスについての話題が尽きない1年になりそうです。