H7N9鳥インフルエンザ  information
新潟大学国際保健学教室では、H7N9の様々な情報のrumor surveillanceを行っております。
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中国国産の新抗インフルエンザ薬「ペラミビル」は鳥インフルエンザに有効か

ヒト感染性H7N9鳥インフルエンザアウトブレイクを受けて2013年4月初めに中国国内で認可された「ペラミビル」ですが、市場への投入が遅いことが話題にあがっていました。ライセンスを取った南新製薬と凱铂生物が生産に消極的であることと、ペラミビルの不良反応が問題となっているようです。以下関係する中国の『毎日経済新聞』からの抜粋です。

 

 

2013-8-14  09:07  毎日経済新聞

 8月10日に、広東省でヒト感染性H7N9鳥インフルエンザの確定診断症例が1例出たことを受けて、各方面で注目を集めている。現在までで広東省の最初のヒト感染性H7N9鳥インフルエンザウイルス感染症例については、患者の状態と地域が発表されており、鐘南山は人民に家禽類との接触を控えるように呼びかけている。もし広東省へ訪れてインフルエンザ様症状が出現したら2日以内に抗インフルエンザ薬を使用するようにともメディアを通じて提案している。

 今年4月に認可された新薬「ペラミビル」であるが、生産と市場への投入が遅れている。毎日経済新聞ではこの原因を、南新製薬と凱铂生物が生産に消極的であることと、ペラミビルの不良反応にあるのではないかと解釈している。

 

国産新薬の効果を考える

 8月10日、広東省で最初のヒト感染性H7N9鳥インフルエンザの確定診断症例が出た。これにより、鐘南山率いる専門チームが救命に当たっている。昨日(13日)広東省衛生庁の関係者が毎日経済新聞の記者に語ったのは、専門家チームが患者の救命に当たっているが、現在までに容体に明確な変化は無いが、各バイタルは好転をしてきているという内容であった。

 専門家チームがペラミビルを使用するかどうかについては具体的な内容は知らないとして明らかにされなかった。

 今年の初めにヒト感染性H7N9鳥インフルエンザアウトブレイクを受けて、国家食品薬品監督管理総合局は例外的に新抗インフルエンザ薬の認可を急いだ。4月5日には、ペラミビルの塩化ナトリウム注射液を認可し、湖南有色集団傘下の湖南有色凱铂生物薬業有限会社と広州南新製薬有限会社がライセンスを獲得した。(2013-5-2 report.9)

 各会社の製造能力から考えると、ペラミビルの生産には1日必要で、更に14日の品質検査(菌検査など)がかかり、全部で15日の工程となる。南新製薬には大きな輸液生産ラインを持っており、毎日3万瓶のペラミビルを生産することが可能であるとしている。

 原料、生産ライン、備蓄能力などの面から南新製薬のペラミビルの市場投入が期待されている。しかし毎日経済新聞の記者が南製薬の代理店を尋ねると、ペラミビルは「聞くだけで実物を見たこと人はまだいない」との返事が得られた。

 ある地域マネージャーは当新聞の記者に対して、工場には現物があるらしいが連絡が取れないと言った。「現在はまだ販売段階に至っておらず、在庫は存在するが具体的な市場投入については指示が無く販売状況については不明」とのことらしい。

 南新製薬と凱铂生物が生産に消極的であるのは、ペラミビルの不良反応の発生率と関係しているのではないかと、毎日経済新聞は解釈している。

 

 臨床研究では615例が曝露人群となり、内334例がペラミビルを使用したが、体調不良を訴えたのが41%で、分析の結果薬物と関係のある不良反応が26%であった(全体でみると約10%)。主な不良反応は下痢、悪心、嘔吐などで、重篤な不良反応や死亡例は見られなかった。

 

 南新製薬の社長の廖勇は毎日経済新聞の記者にたいして、今年7月頃に市場に上がったペラミビルはA型とB型インフルエンザ(シーズンで流行するもの)に有効であることが分かっているが、鳥インフルエンザに対してどこまで有効なのかは研究中であり、広東省疾病コントロールセンターから備蓄数は増加しておくようにとの指示はあったが、使用するかどうかについては不明瞭なまま保留されていると、現状について話した。

 廖勇は今後ペラミビルの市場参入については明言しなかった。

 

生産・市場投入が緩慢である

 薬品監視局はペラミビルに対して各基準項目に関して非常に厳しく評価しており、薬品の安全性と有効性が確保できたという前提であれば市場投入への時間と臨床での需要を満足に満たせるだろうとしている。

 今年4月に、廖勇はメディアと接触し、「すでに8年かけて研究開発と臨床試験を行っており、1億元の経費をペラミビルに費やして4月に認可を得たので、今年初めにペラミビルの初めての試作生産を行って、専門家の検査も通過した」と発言していた。

 当時、市場では抗鳥インフルエンザの国産薬に対して期待が高まっており、南新製薬に関係する責任者はメディアに対して、準備は万全であり5月には市場投入が可能であると発表していた。

 13日の午後、毎日経済新聞の記者が南新製薬の全国招商ホットラインと部分地区事務所に電話で問い合わせた。担当者がいうには各省によって販売状況が異なっているため、具体的な内容については各地区の事務所に問いあわせて欲しいということであった。広州地区のマネージャーがいうには、現在のペラミビルについては広州ではまだ販売が始まっていないということであった。長沙地区ではペラミビルは7月頃から市場で販売されており、もう少し時間をおけば在庫も確保できるとのことであった。

 凱铂生物事務所からは、ペラミビルの生産については「答えられない」と回答し、取材を拒否された。

 廖勇が記者に訴えたのは、ペラミビルはA型とB型インフルエンザについて広く使用できる薬であるのにも関わらず、鳥インフルエンザの専門でない者たちの評価により誤解されて販売が許されないという状況になることだけは避けたいということであった。「7月には市場に投入したかった。鳥インフルエンザと関係なく評価されるのは心外である」とも言っている。

 これ以外にも、ペラミビルの販売様式の非効率さについても述べていた。

 

 アモイ・香港ヒト感染性H7N9鳥インフルエンザ交流会議でも、専門家は未だにペラミビルを患者に対して使用するかどうかについて明確な発言をしていない。

 

 

 

ペラミビルの市場投入について、中国国内でかなり難色を示されているのが問題になっているようです。日本ではペラミビルは2010年から販売されており、インフルエンザ感染症の重症例などを中心に使用されています。

今回のような新型インフルエンザに対して、どれ程の効果が得られるのか、その臨床効果についてエビデンスが確立されてくると、使用頻度について変化が出てくると思います。

実際にペラミビルを使用しているのかについては詳しい情報を得ることができていません。

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