香港の研究チームが家禽市場がH7N9鳥インフルエンザウイルスの発生源と特定
香港大学と中国内地及びイギリスの研究員が、家禽市場(wet-market)がH7N9鳥インフルエンザウイルスの重要な発生源であると発表した。研究者たちによると、家禽市場と人との密接な接触を遮断することが、インフルエンザウイルスがヒトへと感染するのを防ぐ重要な手段であるということだ。
現在までで、中国全土でのヒト感染性H7N9鳥インフルエンザ確定診断症例は135例で、そのうち45人が死亡している。感染者の分布は12省市の42の地域で、台湾も1例含まれている。最近、1件の死亡例が8月11日に北京朝陽病院で報告されており、このケースはH7N9に感染したのをきっかけに、感染の加重と多臓器不全によっての死亡であった。
▲今年4月初旬での各家禽市場での検査の様子(中国)
マスクはしているが、グローブはしていない。
【研究チームがH7N9鳥インフルエンザの感染経路を発見】
香港大学李嘉誠医学院公共衛生学院及び新興感染性疾病国家重点実験室教授の管軼、朱華晨博士が率いる研究チームと、汕頭大学医学院、アメリカのSt. Jude Children's Research Hospita及びイギリスの研究員チームの共同研究で、4月4日から18日までの香港、浙江省温州市、山東省日照市及び広東省深圳市の2300件の家禽及び渡り鳥の検体を調査した。
ウイルスゲノムを解析した結果、ウイルスは最初に渡り鳥から鴨へ感染し、ウイルスが鴨の体内でリアソータントを起こし、そこからH9N2ウイルスに感染していた鶏へ感染し、さらにウイルスのリアソータントを起こしたためヒト感染性H7N9ウイルスが発生してしまったとしている。研究結果についてのレポートは「Nature」で発表されている。(Nature 2013 doi:10.1038/nature12515 「The genesis and source of the H7N9 influenza viruses causing human infections in China」)
【温州の鶏からH7N7ウイルスが発見された 毒性が強いが感染力が低い】
H7N9ウイルスの感染経路と発生源を研究していると同時に、研究チームは温州の鶏サンプルから、伝播力は比較的弱いが毒性の強い新型H7N7インフルエンザウイルスを発見した。朱華晨によれば、H7N9とH7N7は同族同種の祖先をもち、ゲノム配列が似ており、「渡り鳥がウイルスを鴨へ感染させ、H7N7を原型とするインフルエンザウイルスのリアソータントを起こした。H7N7に感染した鴨とH9N2に感染した鶏が交差感染を起こし、新型のH7N7インフルエンザウイルスを形成した。H7N7は人間が感染したときの状況に似ているフェレットに感染し、肺炎などの呼吸器道感染疾病を引き起こす。これもヒトに感染する可能性がある。」と言っていた。
朱華晨は、家禽市場の鶏はこの2種類のインフルエンザウイルスがヒトに感染するための重要な発生源であり、ウイルスは主に口腔と呼吸道で繁殖し排出され、鶏間では鼻腔と糞便からウイルスが排泄されて感染を引き起こすと指摘している。
今の所、H7N9及びH7N7ウイルスはヒト-ヒト感染を起こす可能性は極めて限られているが、ウイルスを排除しない限り高い確率でヒト-ヒト感染を引き起こすとも言っている。管軼はこれに加えて「内地の華東地区では少なくとも2種のウイルスが同時に流行しており、このまま秋に突入するとヒト感染のケースが出現し続けパンデミックを引き起こす可能性もある」と警告している。
(以下略)